平成18年5月15日
県都市計画審議会意見聴取原稿(県大島支庁別館)
                        森本眞一郎
                    奄美市名瀬末広町7−11
                        本処あまみ庵代表

 

今日やぁ拝みんしょうらん。私は、本事業計画区域内で18年間、古本業を営んでいます。
現在、歯の治療中のため、大変お聞き苦しいかと思います。陳述の後に原稿を提出いたしますので、ご容赦ください。

 

本事業計画は、まもなく県都市計画審議会の皆さまの最終審査を経て決定・認可されようとしています。
そうなりましたら、本年度から事業が実施され、3年後には工事が始まります。
いざ事業が終わって蓋を開けてみたら、目的である「にぎわいに満ちた魅力ある中心市街地」などではなく、
全国のどこにでもある道路は広いが人はいない・・・哀れなシャッター通りに・・・
その時は、皆さまの審査責任も無視できないものと私は考えています。

 

さて、本日、遠く鹿児島から意見聴取と現地調査のためにご來島なされた皆さまには、心から厚く感謝いたします。
私の主な意見は先の意見書にて提出済みですので、今日は、ただ一つのことだけを皆さまにお願いに参りました。
それは、今後、ご審査する上で次の三点のことをこちら現地にてご確認なされて帰ってほしいということです。

 

実はこの会場にさっき参って知ったんですが現地調査はもう終わったそうですね。
私の今日の意見内容は本日の現地調査についてのお願いだったんですが、
現地の市当局から聴取なされて、確認した現地調査ということでお汲みとりださい。
皆さまご公務のことですから、当然、現地調査の報告義務も伴うはずです。
あとで、現地調査報告書の開示請求をいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

まず、一点は、本地区の商店経営者と間借り人たちについてです。
本事業計画に対する彼らの賛否の実態をご確認いただきたいのです。
具体的に申しあげますと、本地区の土地建物所有者たちではなく、
私のように本地区のテナントで営業している商業者や借家人たち利害関係者たちが、
本地区に何人いて、その何人が賛成あるいは反対しているのかということです。
この確認は、施工者の奄美市当局から直接ご聴取が可能です。

 

二点目は、本地区の「商店街の衰退が顕著」であるかどうかの確認のお願いです。
具体的に申しますと、本地区の空き店舗の数をご確認ください。
ご無理な場合は、これも市当局から直接ご聴取が可能なことです。

 

三点目は、本地区の「住宅密集地が防災上も危険な地域」であるかどうかの確認です。
具体的には、(1)本地区に消火栓が有るか無いか。
(2)有るとしたらその数と設置場所。そして、
(3)中心市街地の道路幅はみんな4メートルになっているのかどうか。
(4)本地区には消防車の入れない道路があるのかどうかという確認です。
時間的にご無理ですので、市当局から、直接、ご聴取ください。

 

それでは、私が、なぜ、この三点を確認なさることが
審議会の皆さまの今後のご審査の上で必要であるのかという理由を次に申し立てます。

     陳述

 

本事業計画(案)の概要の3「設計の概要」の(1)に「土地区画整理事業の目的」があります。

この中には、施工者の名瀬市が本事業を計画するにいたった二つの理由があげられています。
短いので読み上げます。

 

「本地区は本市の中心市街地であるが、商店街の衰退が顕著となっており、
また、住宅密集地で防災上も危険な地域となっている」と書いてあります。
私は当初からその二つの理由の根拠がよく理解できませんでした。
それで、市当局にその根拠を示すように求めましたが、未だに納得のいく回答をもらっていないからです。 

 

確かにこの不況下、全国の地方都市の商店街と同様、本区の中心商店街でも経営状態は大変に厳しくなっています。
市当局は、中心商店街の衰退が顕著であると勝手に診断しました。

市当局が治療するには、約100億円かかるが、区画整理事業という大手術をすれば
このまちの衰退病は治るからと迫ってくる悪徳医師とまるで同じです。
私たち商業者は市当局の患者でも餌食でもありません。
診断を頼んだこともありません。
「余計なお世話だ!そんな馬鹿げた手術はやめてくれ!自分の病は自分で治すちば!」
とこの数年間、市と局に何度も申し入れてきたのです。

 

その証拠の一例をあげましょう。

名瀬市通り会連合会が平成13年と14年、本事業計画の賛否を問うアンケート調査を自主的にいたしました。
いずれも、反対者の方が圧倒的に多く、それぞれ、74%と76%でした。
テナントの多い中心商店街は、合意形成どころか、3人に2人は反対しているのが実状です。
これに対して市当局は、平成14年、本計画に反対する陳情書の署名者たち全員に対して、
あろうことか、平田名瀬市長名でわざわざ「アンケート調査の意味が不明」という公文書まで送付しているのです。
本計画は、まちづくりや中心市街地の活性化のためといいながら、
実際は、中心商店街の意向などは全く無視しているのです。

本計画は、やはり、業者のための100億円の事業のばらまきであり、
市当局のための公共用地の拡大や転売、
さらに固定資産税の増収のためであると現在の私は断言したい。
そのために住民をそそのかし、ダシにし、
あげくはあらゆる権利を侵害し剥奪する事業計画ですから私は決して認めるわけにはいかないのです。

 

名瀬市は、平成16年、都市計画決定の手続きの直前に一度、本地区内の商店主たちの意向調査をしています。
しかし、データは公表していません。
したがいまして、審議会からのご確認を要請する次第です。
逆に土地建物所有者のアンケート調査だけは「賛成が82%」として、
自らが捏造した調査資料を誇大に公表していますが、そのうち内実が暴かれるでしょう。

 

一点目に依頼いたしました「本地区の商店経営者と間借人たちの本事業計画に対する賛否の実態」
のご確認はそのような理由からです。

 

さて、何を根拠に市当局は、「中心商店街の衰退が顕著」と判断しているのでしょうか。
「商店街の空き店舗が多いから」との担当者の返答でした。
「では、空き店舗率は?」と尋ねますと、「その調査は担当の部局が違うからそちへ行ったら」という回答でした。
私たち利害関係者達に対して何ら説明責任を果たしていません。
平田市長も同様ですが、時間がありませんので、本日は申し立てません。

空き店舗率を別の課で尋ねましたら「約10%」でした。
2年前のデータです。
しかし、その数字は空き店舗が比較的多いほかの通りなども含めての数字でした。

それで、二点目に、本地区内での空き店舗の数と率のご確認をお願いしたのです。

今日も、私は、本地区内の空き店舗の数を確認しながらここへ歩いて参りました。
本地区だけでしたら、10分も歩けば確認できます。

 

「空き店舗率」はまちの衰退化のバロメーターとして都市再開発のためによく利用されます。
たしか、二年ほど前の国土交通省調べでは、全国平均が約8%だったと記憶しています。
本地区内の空き店舗率は全国平均よりもはるかに低く、わずか数軒、数%です。
市当局のいう、本区は「顕著な衰退」という根拠はあきらかに無効です。

 

三点目は、本地区の「住宅密集地が防災上も危険な地域」であるかどうかの確認のお願いでした。

昭和30年代、名瀬市は「100年の大計」を掲げた大規模な区画整理事業によって、防災対策は万全だからです。

 

私の意見書でも報告しましたが、2002年、名瀬市の消防本部長は、
「末広港地区では消火栓も消防車の出入りも現状のところ問題ありません。
ただし、はしご車は電線のために厳しいです」と答えています。

2004年の県の都市計画審議会は私も傍聴いたしましたが、
与力男委員の発言内容をの信憑性を皆さまにぜひご確認いただきたいのです。
第133回の議事録から引用させていただきます。

「名瀬市の中心市街地には、どの筋もほとんど4メートルぐらいの道路しかない」とか、
「今の段階では消火栓もございません」とか、
「火災が発生したとしても消防車がはいれない」などの発言がそれです。

このことは、県都市計画審議会の審査責任としても確認する必要があります。
道路の幅、消火栓の数、設置場所などの確認は奄美市当局に聴取なされれば簡単にすむことです。

 

以上、三点のご確認のお願いとその理由を長々と申し立てました。

 

最後になりますが、本日は、市当局が本事業計画を実施するための二つの大きな理由、
「商店街の顕著な衰退」と「防災上も危険な地域」というものの根拠がやはり、不当であり、
無効であることを説明させていただきました。

加えて本事業計画には未だに多くの商業者や地域住民、地権者たちが根強く反対していて、
事業計画の決定ができるような合意は形成されていないことも申し立てました。

この二つを理由として、私は本計画の見直しを強く訴えるものです。
なお、本日私が申し立てましたことを証拠として証明するための資料の添付は
審議会から提出を拒否されましたので持参しておりません。
追って、その法的根拠を問わせていただきます。

これで、私の意見陳述を終わります。